私はほっと息をついた。

涙を見られなくてよかった。これ以上演技が続いていたら堪え切れたかどうかわからない。

そもそも、私がガラにもなく泣きそうになったのはカレ等のせいだ。

私の目に映ったカレ等のぴたりと息の合った演技は、水族館特有の波間をたゆたうような柔らかな雰囲気に酔っていた私を一気に現実に引き戻した。

3頭の若いイルカの疾走、大ジャンプ、宙返り。

イルカが遊び好きなことは私だって知っている。

カレ等は自然界でもあぁやって仲間と遊ぶんだ。

調教され無理に演技させられているのではないのだ。

イルカたちもきっと演技を楽しんでいる筈だ。