それは鉛筆1本で描かれた、イルカ。

ただし、星々が煌めく宇宙を悠然と泳ぐイルカだ。イルカは躍動感に溢れ、輝いていた。輝く宇宙の星々よりもひときわ強く輝いていた。

この世界では、宇宙の王はイルカだ。


「イルカだって、世界が広がったんだと思わない?あのイルカたちは、ヒトと触れ合うっていう、世界を知ったんだよ」

私は、ハッとして彼を見た。
彼は気づいていた!


「だから、心配しないで?」


イルカは、世界を手に入れた。王者になった。


彼が優しく私の肩を抱いた。


籠の鳥も、いつかは世界を手に入れるから。


「いつまでも俺の世界でいて。鳥には帰る場所が必要なんだよ」


イルカは決してその身上を悔やんではいない。むしろ、喜びに満ちていたんだ。


彼の腕の中で、私は声を上げて泣いた。

世界はここにあったんだ。