私は少し離れた椅子に座り、彼を見つめた。

私は、絵を描く彼の姿が好きだ。

集中して絵に打ち込む彼自身が、その場の雰囲気すら丸ごと飲み込んで、まるで完成された彫刻作品のように見えるから。

その彫刻作品の主役たる彼の世界観に、私は猛烈に惹かれたんだ。

そんな彫刻となった彼はまるで別人。

神聖で、静寂な、侵し難い空気をまとった、そういうヒトをなんて言うんだろう。

そう、神の使い?

『ぷぷっ』

自分の表現力を内心で笑う。

神の使いはないんじゃないか?それじゃつまり、天使でしょ?

なんて、考えていたら、

「何笑ってるの?」

彼がこっちを見ていた。

「一人で楽しそうだよ」

私は顔まで笑っていたようだ。見られていたなんて恥ずかしい。

「あ、いや。なんでも」

顔が赤くなるのを実感しながら答えると、

「できたんだ。見て!」

そう言って彼は完成した絵を披露した。