飯島和也は、勇次の父親と小学校以来の同級生で、両親がともに農家をやっていたこともあり、非常に親交が深い。

たまに食事も一緒にする仲なので、勇次としては穏便に済ませたいのである。



(さくら)「あんたはどっちの味方なのよ‼」



別にどちらの味方でもないが、勇次がさくらを止める理由はもうひとつある。

それは、高校時代の飯島和也は「地元最強の暴走族」「桜ノ軍団」の三代目総長。

つまり根っからのワルだったのだ。

今でこそオヤジになって丸くはなったが、いまだ本気で怒らすと本当に危ない、

勇次が子供の頃、従業員にキレている牧場長を見たが、暴走族で叩き上げられた気迫は凄まじいものであった。

自分が怒られたわけではないのに、数ヶ月牧場長の顔を見れないほどだった。

そんな人にさくらは喧嘩を売っているのだ、当然さくらを止めるに決まってる。



(勇次)「色々理由はあるが、ある意味お前の味方だ」

―ドカッ‼―

(勇次)「ゴフゥ‼」



何が気に食わなかったのかさくらに殴られた。

いや、おそらく八つ当りだろう。



(さくら)「いいわ働いてやるわよ、ただしオッサン‼ ツナギ代稼いだら辞めるからな‼」



牧場長は相変わらず人をバカにした顔で、煙草の煙を鼻から吹き出していた。



(さくら)「その顔がムカつくのよジジイ‼」



怒れるさくらをよそに、まるで所定の位置のようにユウキがまたさくらをあすなろ抱きする。



(さくら)「やめろ‼ 抱くな‼ 乳を乗せるな‼」



龍巳はまた勇次の隣で「俺たち子供だろ?」のポーズを決めている。



(さくら)「テメェは死ね‼」



かぶせボケの連チャンに勇次は白目全快だ。



(さくら)「絶対に辞めてやるからなぁぁぁー‼」



さくらの苦痛の叫びが、さんちファームにこだました。