(龍巳)「ほらさくヤン… イメージして…」
両手を広げながら勇次の隣へと歩き出す龍巳、何をするのかと思えば、勇次の右肩に肘を乗せて、カッコつけたポーズをとったのだ。
なぜか左肩でもユウキが同じくポーズを決めている。
そしてムダにキメ顔で言うのだ。
(龍巳)「ほらさくヤン… 俺たち可愛い子供だろ?」
(さくら)「どこがよ‼」
さくらの怒声がさんちファームに響きわたる。
龍巳とユウキはどことなく誇らしげで、真ん中に挟まれた勇次は二人のバカさ加減に白目全開だ。
(さくら)「もういい‼ もうやめた‼ このバイトやめさしてもらうわ‼」
怒りの頂点に達したさくらは、帰ろうと出口に向かって歩き出した。
すると、煙草に火を着けた牧場長が信じられないことを言い出した。
(牧場長)「おい青井、このまま帰れると思うなよ? お前のそのツナギ、いくら掛かってると思ってるんだ」
たしかによく見て見ると、
さくらにジャストサイズの黒いツナギには、背中に金色でさんちファームの刺繍と、胸の部分にメタリックピンクで「青井桜」の刺繍が小さく入っていた。
ムダに金がかかっている。
(牧場長)「その分くらい働いて貰わないと俺、訴えちゃうよ?」
汚い大人だ、そんな法的手段を出されたら、小娘のさくらには為す術がない、
(さくら)「ぐぬぬぬぅぅ…」
怒りのあまり、毛根や涙腺などの、ありとあらゆる穴から血が吹き出るんじゃないかと思うくらい、凄まじい顔を見せるさくらだった。
(勇次)「お、おいさくら… 怒る気持ちは分かるけどよ、ここは穏便にしてくれよ?」
怒りを宥めるように、勇次がさくらを落ち着かせようとしているのには理由があった。