「農業科は別校舎」なんてあり得ない、

そもそも「農業科」など存在しない、

「農業学」「工業学」はあくまで授業の一環であり、それを本格的な授業とする別校舎など「北総」にはないのだ。



(さくら)「とにかく、こんなところで話してもラチがあかないわ、事務所に向かうわよ」



そう言って、さくらは先に事務所へと歩き出した。

先ほどのさくらの言葉に、勇次は漠然とした気持ちを抱えつつも、

さくらの後を追うように、龍巳と事務所へ歩き出した。



事務所の前に着くと、先に着いていた同学年の奴らが、なにやらざわざわとしている。

それは目の前にいる女の子(さくら)に興味を寄せているからだった。



(牧場長)「はいちゅうもーく」



場を締めるように牧場長が手を叩いて視線を集めた。

その流れのまま、さくらの紹介に入る。



(牧場長)「今日からウチで働く事になった「青井さくら」君です、おめーらよろしく」



自己紹介を促すように牧場長はさくらの背中を押した。

背中を押されたさくらはガチガチの体で挨拶を始めた。



(さくら)「あっああ青いさくらてです‼ ふつつつか物ですがよよよよろよョョ…」



パニクって何を言っているかわからない、挙句の果てには歯を見せて変顔に笑っているだけだった。

いや、笑っていると言うより完全に固まっているだけだ。



(?)「ニャ~ん可愛い~」



そんなさくらを見て、萌えてしまった女子生徒の一人が、さくらに飛び付いて抱きしめた。

彼女の名前は「三毛田ユウキ」

あだ名は「ネコ」

焦ったり驚いたりすると、「ニャ」と言う言葉が出る上に、顔も猫っぽいので「猫」だ。



(ユウキ)「この子ウチに持って帰る~」



そう言って人形のようにもて遊ぶユウキと、されるがままのさくらであった。