(勇次)「そうだな… 今はあいつがしたいことを尊重してやろう」
(さくらがバイトで時間を削られる分、俺が情報集めをすればいい、平日は学校があってさくらの隣に居てやれないが、俺は俺のやるべきことをしっかりとやってから、あいつの隣に座ればいい…)
勇次は自分の中で言い聞かせ、バスに乗り込んだ。
ところでなぜ、龍巳と勇次は授業でバスに乗らなければならないのか、それは理由がある。
「北総」正式名は「北桜居総合高等学校」といい、
入学して半年後に「専攻」という授業で受けるコースを「農業学」「工業学」から選ぶ、
勇次と龍巳の専攻は「農業学」で、
学校の敷地内に「水田」や「畑」や「多少の家畜」はあるのだが、学校側が管理出来ない家畜を、育成出荷している農場が離れた場所にあるのだ。
今回の「専攻」はその農場で授業を行うため、勇次と龍巳はバスに乗り込んだと言うわけだ。
ちなみにその農場の名前は、
飯島和也が牧場長を勤める「さんちファーム」
さくらがアルバイトをすることになった場所である。
かくして二人は、さんちファームに着いたバスから降り、事務所へと向かって歩き出す。
そして、当然のように勇次の隣へさくらが加わり、
三人並んで事務所へと向かう―
(勇次&さくら)「何でだよ‼」
たまらず勇次とさくらがつっこみ、
龍巳はただアホ面でにやけてるだけだった。
(勇次)「何でだよ‼ 何でここに居んだよ‼」
(さくら)「何でって、私のバイト先がここだからよ‼」
(勇次)「お前「北総」だったんだろ!? だったらここが「北総」の授業場所って分かるだろ‼」
(さくら)「知らないわよ‼ そんな別校舎で授業受けてる「農業科」のことなんか‼」
(勇次)「はぁ!? お前なに言ってんだ? 別校舎なんて聞いたことねぇぞ」
(さくら)「はぁ? なにいってんの? 「農業科」と「工業科」は別校舎でしょうが」