(さくら)「ふーん… なんだって良いけど、言われたことはちゃんとやってよね?」
(勇次)「ハイハイ… 分かりました」
(さくら)「あ‼? 「ハイ」は一回だろ‼」
(勇次)「……ハイ…」
とまぁこんな感じで、田村家に許可を取ることになったのだが、
「働かざる者食うべからず」の家訓を持つ田村家は、働きに出ることに寛容で許可はすぐにおりたのだった。
かくして、本格的にアルバイトを始めることになったさくらだが、本人はすでにバイトの候補を決めていて、
本当は涼子が店長をしているコンビニが第一候補だったのだが、
先ほどの「さくらが酔っ払いのオヤジをシバいてしまう」勇次のイメージが後を引き、
第二候補の「さんちファーム」に履歴書を送り、面接を受けることにした。
(さくら)「時給も850円でここら辺じゃなかなか良いし、「動物と子供たちとのふれあいが多い職場」って書いてあるし、面白そうね、可愛い子供たちとのふれあい…うふふ…楽しみだわ」
農業とは無縁のさくらが農場を選んだ理由は、「可愛い動物」「可愛い子供」「適度な給料」が魅力的だからだった。
そしてきたる月曜日、さくらは「さんちファーム」へ面接に向かった。
(さくら)「ここが「さんちファーム」か…… あれ…? なんかけっこう…?」
さくらが言葉を詰まらせる理由は、
そう、「ボロい」のだ、
田村家から華顔神社との間に小さい工業地帯があり、その一角に「さんちファーム」があって、
けして建物すべてが木造とかいうわけではないのだが…
やたらと目につく電気の配線、
どこから貰ってきたかわからない錆び付いたコンテナ、
そして、事務所らしき建物はプレハブ小屋など、
とにかく、目に見える物すべてがボロさを演出しているのだった。
(さくら)「本当にこんなところに子供たちが来るの!? もはや人を寄せ付けない雰囲気すらあるわよ!?」
(?)「おいお前‼」