頭の上から、聞き覚えのある声が降ってきた。

まさかそんなハズはない、と自分に言い聞かせながら、恐る恐る顔を上げると。


「し、篠原先輩…!」


…まさかそんなハズは……あったみたいです。


「なにやってんだお前、そんなとこで」


ポケットに両手を突っ込み、腰をかがめてあたしに問う。

慌てて立ち上がりスカートの埃を払いながら、「い、いえなにも…」と挙動不審に返した。


「……傘がねーってクチか」


「え"」


早速バレた。


雨が降り注ぐ外とあたしを見比べて、すぐに見抜いたようだ。


「いや~…あの……えーっと」


さらに挙動不審になっているのは分かってるんだけど…。

はいそうですともなぜか言えない。


「ったく……馬鹿だな」


「んなっ…」


ば、ばかですとな!?

雨が降るなんて予想できないもん、仕方ないじゃない!


「……って…はい?」


突き出されたのは……黒い傘でした…。

……予想してるしこの人!