――悠由サイド――


「悠由!」


体の中心を締め付けられるようで、苦しさに耐え切れなくてずっと泣いていた。

そんなあたしに、聞きたくて、聞きたくない。

愛しくて、恨めしい。


あの人の声が届いた。



「先……輩…」



彼にしては珍しく、焦った表情を浮かべている。

そのなかにどこか、悲しげな面影もある。


「いや……来ない、で…」


飛びのくように立ち上がり、後ずさった。


「待て悠由。聞け」


伸びてきた左手が、あたしに触れた。


「いやっ! 触らないで!」


その手を、バシンと思いっきり跳ね除ける。


あの女の人に触れた…。

あの女の人を抱いた……その手で、触らないでほしい。


「聞け!」


「いやっ! あたし先輩の彼女じゃないんです! 聞く必要なんてありません!」


半分泣いたままで、叫ぶように言った。