「派手で大きめなお飾りやね!それならついこの間も買うてったお客はんがおりましたわ」


がさがさと楓の要望に見合った正月飾りを探し始めた女が笑いながら話した。



「そのお客はんねぇ、とっても風変わりなお方でね?なんかボサボサの頭に風変わりな履き物はいて。そういえば話し方も少し変わってたわね」



「…おばちゃん、そいつ…なんとかぜよ!とかなんとかやき!とか言っとったか?」


「そうそう!もしかしてあのお兄さんとお知り合い!?」



中年女性は楓の上半身いっぱいの大きさの正月飾りを手渡し、豪快に笑う。

「知り合いというか…。
それより、そいつが来たのはいつや?」


楓は金子と引き換えに飾りを受け取った。


「はいおおきに!つい三日前くらいよ」


(まだここにいたのか…)



「じゃあ、まいど」


「ええ!よいお年を!」



買い物を済ませた楓は再び人混みの中を掻き分けながら壬生への道を急いだ。





「坂本……龍馬…」



年末の祭り気分に沸く町とは違い、楓の気持ちは暗くざわついていた。