師走の四条河原町は足下すら見えないほど人で溢れかえっていた。


禁門の変から始まり京の大火、長州残党狩りの被害を受けたとは思えないくらい町は活気づいている。

道いっぱいに並ぶ露店や呼び込みの声に久々に少しだけ気分が高揚していた楓は寒さも忘れて視線を忙しなく動かしていた。




「おーい!そこのねえさん!門松どうだい?伊勢から取り寄せたいい松だよ」


「ねえちゃん鏡餅はどうだい?」


「こっちは佃煮があるよ!」



様々な露店の店主が楓に声をかけてくるがお目当てのものが見つからない。



「そこの子!この正月飾りどうや?」


「ん?」


求めていた呼び止めに期待を持って足を止める楓。

声をかけてきたのは腰の曲がった小さな中年の女だった。

楓は女の店に入ることにした。



「どんなお飾りをお探しで?」


露店の中には隙間がないほど様々な形の正月飾りが並んでいる。


「そやな。百姓のような武家のような屋敷に飾るある程度派手で大きめの飾りあるか?」


今のご時世、下手に新撰組とは口に出せないため曖昧な表現でしか言い表せない。

我ながらおかしな注文だと思いながら女に気づかれないようにちらりと表情を伺うと、意外にも納得したような顔をしていた。