「山南総長、実は少々聞きたい事があるのです」


会話が一段落ついたところで、伊東は真顔に戻る。


「何ですか?」


山南は首を傾げた。


「新撰組は最初、尊皇攘夷の思想を持って発足したと藤堂君から聞きました。しかし今では松平公のお抱えになってから佐幕の考えが定着しつつある。
その事を貴方はどうお考えですか?」



「え…?どうって……」



返答に困る質問に、山南は眉を八の字にしていた。


「総長としての立場ではなく、山南敬助個人としてお答え願いたい」


「えっと……」




――ガラッ




「山南総長、ちょっとええ?」


乱暴に開け放たれた襖に伊東の心臓は跳ね上がった。


「あ…ああ、赤城君か。何だい?」


「鼻緒が切れた。直し方わからんから教えてくれへん?」


図々しくそう言うと、楓は底が泥だらけの壊れた下駄を見せた。


「いいよ。でもここじゃ汚れるから玄関に行こう。布の切れ端は持ってるかい?」


答えに困っていた山南にとって楓の登場は正に助け船だった。



「君!!赤城君と言ったか?
総長室に無断で、それも雑用のような事を山南総長やらせるなんてどういう神経をしているんだ!?」


「ん?図太い神経」