「伊東参謀の動向を?」



鉢金に浅葱の羽織という正にたった今見回りから帰ってきたという格好で副長室に姿を現したのは、斎藤であった。


「山崎君は長州の動きを探ってもらってる。すまんが監察と両立して欲しい」

「わかりました」


土方の命令を聞き返すこともせず斎藤は頭を下げて部屋を出ようと立ち上がった。



「斎藤君。君は伊東さんをどう思う?」


珍しく疲れたような、弱々しくも聞こえる声で土方は斎藤の背に問いかけた。


「自分は隊務をこなすだけです」


「ふっ。君は意地が悪いな」


「…失礼します」


額に手を当てて鼻で笑う土方を一目見てから斎藤は静かに退室した。


(無責任なことは言えない。しかしこのまま参謀として納まるとは思えない)


斎藤は足早にその場を去ろうとした。



「おう、一!巡察お疲れさん」



「永倉」


斎藤の足を止めたのは偶然鉢合わせた永倉であった。

「この方向から来るってことは…土方さんに呼び出し食らったなぁ?」


「そんなところだ」


「ふーん」


「失礼」


「おう!」


永倉は人懐こい笑顔で手を振った。