美紀を車に乗せ、早めに会場へ向かう。
いや、本当はもう少し遅くてもって思うけど、女ってのは写真撮ったり話したりすんだろな。
 
“優夜、時間がなくなる”
 
そんなん言われちゃ、急がない訳にはいかない。
 
稔に一応、今から行くよとメールをしたら、
 
“あっ俺1時間前に着いてるよ”
 
と返って来た。
…どんだけだよ。そういえば、遠足の日とか、一人張り切って朝の6時とかに学校来てたな。
 
 
昔を懐かしく思い、少しにやけていたら、隣に乗っていた美紀が、不審そうな顔をして
 
 
「優夜…顔気持ち悪い」
 
 
と言って来た。
 
…顔が気持ち悪いんじゃなくて、何故笑ってるのか、じゃないのか?
 
 
赤信号で停まった時に、美紀に向き合い、軽くデコピンしてやった。
 
 
「うわー!出たぁ!得意の小さな反抗」
 
「うっせ」
 
「折角綺麗にしてもらったのにぃ。オデコ痛ぁい」
 
「舐めときゃ治る」
 
 
そう言ってデコをペロッと舐めたら、さっきまで五月蝿かった美紀が、真っ赤な顔して黙り込んだ。
 
 
「本当に舐めるとか意味分かんない」
 
 
なんて言いながら。