その光景は、何だかずいぶんと久しぶりに感じられた。

「母親が倒れたんだ」

そう答えた航に、あたしはピタッと鍋をかき回していたおたまの手を止めた。

誰が倒れた、ですって?

「でも、大丈夫だった。

命に別状はないって」

そう言った航に、
「――そう…」

あたしはホッと胸をなで下ろすと、おたまをかき回す手を再開させた。

「父親と話しあって、和解をしたんだ」

航の話に耳を傾けながら、あたしは手を動かした。

お母さんは無事で、お父さんと和解をしたのか。

その様子に、全てが順調だと言うことがよくわかった。

「莢の方こそ、何をしてたの?」

航が聞いてきた。