「 ――― ここ、東向きの部屋だから
朝になると
部屋中ピンクに染まるでしょうね 」
看護士さんが
見上げる那智や、比奈や、山瀬
花さんの後ろから、そう言って優しく笑う
「 …うっしゃ
オレ手、洗って来るわ
あ、 もう面会時間終わりか 」
「 あ 」
「 あ、 そっか… 」
「 大丈夫ですよ 少しくらい 」
看護士さんがイタズラっぼく笑って
部屋の端に寄せてあった
手付かずのケーキの乗ったカートを
カラカラと部屋の中央に運んで来てくれた
「 時期はちょっと違うけど
―― お花見っぽいね これ 」
花さんが胸の前で、腕を組む
「 うん!
…あの、ナースセンターにも
看護士さん、何人かいますか? 」
比奈が皿の上に
まだ大量に残っているケーキを出して
看護士さんの前に差し出す
「 ええ どうして? 」
「 ワイロだろ 比奈村 」
那智がニヤッと笑って
比奈の顔を見る
「 人聞き悪いなあ!
お礼だよ お・れ・い!
時間延長許してくれてるんだし〜 」
「 …食べれば消えちゃうし? 」
花さんまでそんな事を言って
看護士さんに、ケーキを勧める
皆 笑って
「 ありがとう 」と
看護士さんがウエートレスさんみたいに
腕の上に皿を置こうとした時
ベットの上を見たまま、動きが止まる