比奈が つぶやく


「 ねえ… ミツコ、なんで…?

あんたんち、全然問題ないじゃん…

おじさんだっておばさんだって
羨ましい位、優しいのに…

…学校だって

そりゃ確かにあんたワガママだから
色々あったりしたけど
基本、上手く行ってたじゃん…

なんで…? 」


山瀬はグイ と目を擦り
壁側を向いた





「 お皿、持って来たよ 皆 」


紙皿と、プラスチックのスプーンを
カートごと持って来てくれた看護士さん


比奈も目をこすりながら
持って来たケーキを箱から出し

テーブル代わりのカートの上に拡げて
一番最初に、ミツコの好きな
苺のミルフィーユを、皿に乗せた



「  大丈夫よ  」



各々にスプーンを手渡し
看護士さんは、カラリと微笑む




「 かなり時間はかかるけれど
リハビリすれば
言語障害は良くなっていくし


…ここに来た時に比べれば
本当に見違える程、回復してるの 」





――― それがホントの言葉なのか


…オレ達 子供に対する
社交辞令みたいなモノなのかは
判らなかったけれど ―――






「  看護士さん 」



「 はい? 」


「 …ここ、面会時間って
何時までっすか? 」


「 八時までですよ 」



「 空哉? …どうした? 」