横にいた山瀬がとっさに支え
看護士さんが
「 補助ベット出して、横にしようか 」と
壁に収納してあったソファベットを
ガチャリと横にし、場所を作った
病室の隅のカゴから
毛布が出され、体の上にかかる
比奈は
看護士さんが聴診器をあてようと
襟元を緩めた瞬間、薄く目を開け
青い顔のまま、体を起こした
少し、比奈の様子を見た後
看護士さんは、扉のそばに椅子を起き
クリップボードの書類に、何か書いている
終始無言の空気の中
「 ちょっと持って来るね
何かあったら、それ鳴らして 」と
やけにキレイな
ナースコールのブザーを指差し
パタパタと廊下に出て行った
天井を見て何か言っている
ミツコの顔を見ながら、話し掛ける
「 ミツコ
―― 随分、殺風景な部屋だなオイ 」
その言葉に弾かれた様に
比奈が立ち上がり、ミツコにしがみつく
「 ミツコ! ―― ミツコ?!
あ… あのね?!
ホラこれ!!
修学旅行で、ミツコ、
ピンク好きじゃない
―― だ だから
二人お揃いで、
こんなカワイイ手提げ買ったよ?! 」
比奈はガサガサとカバンを漁り
少しくたびれた、和紙の包装を取り出して
ミツコの前に差し出して見せた
ミツコはゆっくりと
その包装紙を破って
小さな手鞠模様の手提げを拡げると
腕に通し、比奈に笑った
「 ―― ミツコぉ 」