「 悪い!! 遅くなった! 」



「 マジおっそいよ! 那智! 」





午後の渋谷駅前

騒音の数値を教えるオレンジ色
デジタル表示の数字がまた変わった


タクシー、バス停があるロータリーに
山瀬の寄越してくれた車が
ハザードを点けて停まっている




基本的にウチの学校は、
車での通学、送り迎えは禁止


とは言っても
結構遠くから来ているヤツも多いし
下校時間にはかなり多くの車が
一応はこっそりと停車し
走り去って行く光景を見る


紺と白の帽子に、制服を着た
ウチの小学部の生徒が
手を挙げ、駆け足で横断歩道を渡りながら

宝くじ屋や
古本を売る露店の横で
定期券を出すと、駅の構内へと歩いて行く



母親が迎えに来る、
駅の裏まで向かう時

何度となく目にした
クラスメートの、あの定期を出すしぐさが
なんだかすごくカッコよくて

うらやましかったのを思い出した





「 あ! ちょっと皆待って!
お土産忘れたの! 」


「 え オマエ、
ずっと例の、着物生地の手提げ
カバンに入れて持ってたんだろ? 」


「 うん あの
すぐ! そこだから!! 」




比奈が入って行ったのは
道路を隔てた通りの
小さなケーキ屋の入口