それは気にしていた

うどんを見ると、思い出したりもした

笑っていても
それは心のどこかに、常にあった




でも

どんなに忙しくても
もしミツコが『 面会出来る状態 』なら
花さんが報告しないワケがない



―― だから

『 そういう意味だ 』と思っていた



「 …ミツコ
学園祭、出て来られないかなあ?

もし出て来られるなら
私、一日一緒に回るし

…花さんに
相談してみようかと思うんだけど
今って忙しいし、どうなんだろうなって 」




瞳を明るくして
ミツコの事を語る比奈

どう答えようか躊躇していたら

オレ達が立っていた横の
社会科準備室のドアが、ガラリと開いた



小さく悲鳴をあげて
比奈が飛びのく





「 ――― 山瀬   」




「 声 聞こえたからな 出て来た
…中入って、話した方がいいぞ 」



少しカビ臭い用具室には
結構貴重な、父兄から寄贈された資料とか
奥の部屋には、鎧武者が立っていたりする


山瀬の手には、
潘主事に区分けされた、古い日本地図


「 湯浅が描き写すって言ってたから
取りに来た 」


「 あー! 開幕、バックに
デカイ日本地図欲しいって言ってたな 」


「 え、真木のトコ、何するの? 」


「 新撰組

真田が脚本、今 頑張って書いてる 」


「 へえ〜!!
最近あの人、少し話しやすくなったね

痩せて来てから、
ちょっとかっこよくなったとか
言ってるコいるし 」



「 パーティーにも誘われたけど
断ったみたいだぞ 」


「 え、なんで?! 」


「 見た目でいきなり近寄って来るヤツは
信用ならないってさ 」



「 …そんな難しく考えなくても… 」


「 まあ、色々あんだよ 」





「 真木、比奈村

―― 伊藤の様子、聞きたいか 」



本棚をいじりながら
山瀬がこっちを向いた