――― 赤と黒の、がらんどう
そんな言葉がピッタリの空間
窓からの西日
そこから生まれた、長い影
中はかなり広くて、教室二個分位あった
目が馴れて来て
誰かに見られている様な違和感
湯浅同様、オレも息を呑んだ
ディスプレイされた幾つもの椅子に
――― 気味悪いほど
精巧に造られた人形たち
床一面に、加工途中の腕や足が
無造作に転がっている
ビー玉を踏んだのかと思い、拾ったら
それは人形の青い目玉
…再び視線を、上に向けた
多分、左隣の部屋との敷居も壊して
ひとつにしたんだと思う
右奥にだけ、間仕切りの壁があって
その壁にある入口には、
暗幕の様なカーテンがかけられていた
「 今 珈琲 炒れるから
その暗幕の奥で待ってて 」
ガリガリと音がして
香ばしい香りが部屋中に拡がる
だけど、その匂いさえも
安心感を与えない
カーテンの向こうから
微かにテレビの音がして
『 日常 』を求める気持ちが
そこに足を進ませた