何か新しいビルでも建つのか
どこかから
鉄筋を立てる為の鉄球を打つ、
規則的な音が、狭いオレンジの空に響く
あまり人影が無い雑居ビルの細道を歩き
湯浅は携帯を開いて
地図サイトで調べたマップを見ながら
" ハルト "さんが待つ工房を探す
赤く染まる空に
低く張り巡らされた、黒い電線
「 …ここだ 」
コンクリートで出来た
かなり古いビル
外壁には各階に、四角く空いた窓
ガラスは無い
「 ―― 四階だって
そこまで行ったら、二番目の部屋 」
内壁と外壁の間を沿う様に走る
あちこち欠けた、階段を昇って
たどり着いた時には
湯浅はヘトヘトになっていた
錆び付いて、
塗料の剥がれたドアの横に付いた
プラスチックの丸いブザーを押す
外にまでその音が響いて
中からの反応を待った
「 ―― どうしよう 」
湯浅が心細げに呟き
少し待ったけれど、返答が無い
「 …すみませーん!!
お電話頂いた
『 ラブリーギャルズ 』の
者ですがー!! 」
「 うわっ?! 空哉っ 何言ってっ 」
湯浅が顔を真っ赤にして
オレの背中を引っ張りながら
慌てて辺りを見回す
すると
くくく と、笑いを噛み殺す様な声が
ドアの向こうから響いた
「 … 間に合ってるよ
開いてるから入って 」
「 お邪魔しまーす!
ホラ 湯浅、行こうぜ 」
「 …… お邪魔します… 」
湯浅は少し、涙目