「 く、空哉 待って 」


「 あ 」



ビルに射す夕暮れ

叔父さんの家、田園調布から
新宿駅に たどり着いた

賑やかな東口や、西口には出るけど
北口には来た事がなかった


見渡す限り、背の低いビルで
店っぽい建物は何もない



コンビニも近場に見当たらなくて
ジュースの自販機が見えたから
そこでスポーツ飲料を買って来た



「 湯浅 飲めよ 」


「 う、うん …ありがと 」



ゴクゴクと喉を鳴らし
首から襟元に、汗が流れて行く


「 …ごめん 夏、よわくて 」


「 オレは、冬ムリ 」



オレが冬、
固まっている事を思い出したのか
青い顔をしながら笑う


「 空哉って、
見る、とコーラ飲んで、るよね 」


「 …ウチの母親が家で
100パーのジュースしか出さないんだよな
後はお茶とか

―― 平気か? 」


「 うん

… 食べる時は食べるんだけど
絵とか描いて夢中になると全然だから…

少し、改善しないといけないよね 」



しばらく日影に座って
湯浅の回復を待つ



行こう、と声をあげて
ハンカチで汗を拭きながら
湯浅は、細い体を起こした