相手が出たと思われる瞬間
湯浅はあろう事か、電話を切ってしまった
かなり緊張している様で
手が白くなって震えている
「 …オレ、代わろうか 」
「 …… いや 自分でやる
―― これは俺の本、
それに関わる事だから 」
再度、少し震えた
" すみません
切ってしまいました "から始まる会話
『 螺旋世界・ユグドラシル 』
それはマンガで
主人公、アート・スフィアルの
衣裳を作って欲しい事
それが後一ヶ月で、可能かどうか
しばらくして、湯浅の体がビクリとして
次には晴れた様に明るくなり
『 行きます! わかりました!
ありがとうございます!』と
頬を紅潮させて、見えない相手に
頭をさげる
携帯を切った湯浅の顔が
興奮していた
「 …OKでたのか? 」
「 うん…!!
――― 新宿北口に工房あるから
そこに来てくれって! 」
「 質問 間に合うのか? 」
「 … 今回
結構依頼、絶対来てたと思うんだけど
自分で作りたい服があって
誰のも受けてなかったんだって
ちょうど今朝、それが出来上がって
俺がたまたま一番だった… 」
「 息、吸って吐いて話しろよ 」
「 う、うん 」
そうオレが笑うと
湯浅も照れながら、大きく深呼吸した
「 でね
… 一ヶ月で作れますか?って
聞いたらさ 」
「 うん 」
「 " 誰に言ってるの? "って… 」
「 ―――― うっわ…
やべえ!! カッケエ!! 」
「 うん!!
や… なんか、涼しい感じの声でさ
すごい優しかったしさ!! 」
湯浅とオレは、ゲラゲラ笑いながら
『 かっけ〜!! 』を繰り返していた