剛志は入部届けを握り締めて走っていた。


クラブ棟、特別棟、一般棟、裏庭や校庭の隅から隅まで走り回った。


けれど、どこにも乃里子の姿はない。


「あぁー、くそっ!
乃里子、どこ行ったんだよ!!」


屋上で校庭を見渡した。


乃里子の姿なら遠くからでも分かると思っていたが、どうしても見つからない。


『放送部からのお知らせです。』


スピーカーから女生徒の声が響く。


『楽しい文化祭もそろそろ終わりが近づいて来ました。』


「これだ!」


剛志は放送室に向かって駆け出した。


『只今より、校庭にて後夜祭を行います。
ご参加頂けるお客様、全校生徒の皆さん、校庭にお集まり下さい。』


剛志は校舎を駆け抜けた。


『繰り返します。』


生徒達が校庭に向かうなか、剛志は必死で走った。