「あれ?
乃里子ちゃん、今日は一人?」


梓の店は相変わらず客がいない。


長田組の組員達も、頭の奥方の店には出入り出来ないらしい。


しかも一般客を見込めそうにもないこんな場所では、一日中暇に過ごすしかなさそうだった。


「はい。
私だけでも良いですか?」


乃里子が首を傾げると、梓は嬉しそうに微笑んだ。


「もちろんよ♪
さぁ、座って?」


そう言うと、梓はコーヒーの用意を始めた。


乃里子は鞄から数学の教科書とノートを取り出した。


「あら、珍しい。
宿題?」


乃里子の専用マグカップに、いい香りのコーヒーが注がれた。