「記憶喪失なんじゃなかったのか?それになんでそんなことを知ってるんだ」

クルーエルは困ったように顔を歪ませてラディウスを見上げた。

「思い出はまったく残ってないよ。だけど、その代わりに、いっぱい知ってるみたい」

その時、また轟音が耳を裂いた、ような気がした。
どうやらウルフが遠吠えをしているらしい。
そして、ぴくっと耳を動かすとウルフがこちらを向いた。
その瞳は暗く、なにも読み取れない。
ラディウスは思わず身構える。
心なしか、隣にいるクルーエルも緊張しているようだ。

「後ろにいろ」

「駄目!」

クルーエルが叫ぶ。
その時、ウルフがラディウス達に向かって空から降り立った。