空には、いくつもの羊雲が浮かんでいた。
私は、綿飴みたいだ、なんて柄にもなくメルヘンな事を考えながら、ぼんやりと青い空を見上げていた。
「翼、口開いてるよ。」
「ふぇ?」
「…………。」
屋上でそれぞれにお弁当を広げた私と歩美は、貴重な昼休みを気ままに過ごしている。
「…まったく。」
歩美は呆れたように言い放って、身を乗り出すと私の口を掴んだ。
「んっ!?」
「アホ面。ったく、ワンちゃんのことで頭がいっぱい?」
「…………。」
……えぇ、その通りですとも。
私は食べかけのお弁当を放り出すと、胡坐をかいて頬杖をつく。
「あーぁ、女の子がそんな格好して。」
歩美は、まるで母親のような口調で言った。
私は、さながら反抗期の子供のよう。
空は、あんなに大きいのに。
自分は、なんてちっぽけなんだろう。
ボリボリと頭を掻き毟った。
潤いを失った髪は妙に重く、ベタつく。
もう、3日。もう、3日目だ。