「お客さん?」
ジンは顔を上げて、呟いた。
私は、モニター付きインターホンを手に取る。
この部屋を訪ねてくる人間なんて限られている………たぶん、あの人だ。
けれど、訪問者は私が想像していた人物ではなかった。
モニターに映る人物を見て、私は絶句する。
………桜助だ。
『翼、開けて。』
桜助は、当たり前のように、そう言った。
何……なの…。
付き合っていた頃、何度か桜助はここに来たことがある。
まだ、この部屋がゴミ屋敷だった頃の話だ。
頭の中が真っ白になっている私。
「ツバサちゃん?」
何も知らないジンの声に、ハッとする。