けれど、 家路を急ぐ私は知らなかった。 あの後。 私が教室を出た直後。 「諦めたら?翼の性格から言って、脈ないでしょ? ただでさえ、ワンちゃんに夢中なんだから。」 言い聞かせるように、そう言った歩美。 桜助は立ち尽くしたまま、口を開いた。 「……ワンちゃん、ねぇ。」 その言葉の意味を、歩美も、そして私も、 知る術はなかったのだ。