その背中に向かって、桜助はまるで独り言のように呟いた。
「すっかり愛犬家じゃん。」
私は一度立ち止まったものの、何も言わず教室を出た。
廊下を歩きながら、桜助の言葉が頭の中に浮かんでは消える。
― 「すっかり愛犬家じゃん。」
…これは嫌味だったのだろうか?
………なんか…ムカつく。
ペットに愛情を注いで何が悪いの!?
心のずっとずっと奥深くが、チクチクと痛む。
まるで、トゲが刺さっているみたいに。
………早く、ウチに帰ろう。
そうしたら、思いっきりジンを抱きしめよう。
渇きを潤す癒し、
私は今、堪らなく欲している。