私は歩美の言葉を聞きながら、綺麗に手入れされた彼女の爪を見ていた。
面倒くさがりの私の爪は、何も気にしないせいか歪な形をしている。
……同じ女でも、こうも違うか…。
教室の片隅のそんな会話に、急に割って入ってきたのは………アイツだった。
「なぁに!?翼、犬飼い始めたの?」
明るい調子の声。
私は顔を見なくても、それが誰だか分かる。
流れる空気、一瞬にして止まる時間。
私のことを思ってか、歩美は何とも言えない顔をしていた。
しかし、そんな事は全く気にせず近づいてくる………私の元カレシ・三浦桜助。
「あのゴミ屋敷で?」
「…今は、もう、ゴミ屋敷じゃないから。」
「えっ!?片付けたの!?」
「……まぁね。」
ルーズに締めた制服のネクタイ、明るい髪の色、左耳のピアス。
同じクラスだけど、話すのは別れてから初めての事だった。