柔らかい夕暮れの光が差し込む教室で、私は帰りの身支度を整えていた。
「翼。今日、買い物行かない?」
「買い物?」
「うん。原宿とか。」
歩美の誘い、私は少し考えてから口を開いた。
「う〜ん……ゴメン。ジンが待ってるからさ。」
すると、歩美は呆れたように溜め息をつく。
「最近、翼はジンくんの事ばっかだね。」
「え?」
「そんなんだと、彼氏も出来ないよ〜?」
……彼氏ねぇ。
その言葉がいまいちピンとこない。
「彼氏とか面倒くさい。」
「面倒くさいねぇ。」
「ジンは、男と違っていいよ。可愛いし……可愛いしね!」
「はい、はい。ったく、まさか翼が犬にハマるとはねぇ。」
すらりと長い足を組んで、歩美は頬杖をつく。
ホントに最近つき合い悪いんだから、と呟きながら。