3ヶ月付き合った桜助と別れたのだ。
それも、浮気された上にフラれるという形で。
― 「ゴメンね、翼。」
桜助はそう言って私の前で手を合わせ、苦笑した。
その後ろ、教室の扉の横で、腕を組んで勝ち誇った笑みを浮かべるギャルは、1年のナナセちゃん。
金髪に近い茶髪、ノリが軽くてチャラい桜助が浮気している事くらい分かってた。
私だってバカじゃないんだから。
でも、よりによってナナセちゃんに手を出すなんて。
同じ中学出身の彼女を、私が可愛がっていた事を知っているのに。
ナナセちゃんも、ナナセちゃんだ。
どうして……。
私が桜助と付き合っている事、知ってたじゃない!!
― 「翼、怒ってる?」
桜助は、私の顔色を窺うように言った。
その無神経さに、もう呆れるしかない。
腹の底から込み上げてくる怒りを桜助にぶつけるべきなのか、それともナナセちゃんになのか……もうよく分からなかった。
結局、私は力なく微笑んで呟いただけだ。
「どうぞ、お幸せに。」、と。
……桜助が好きだった。
顔がイイだけの、バカみたいな男だったけど……私は桜助の明るさに、確かに救われていたのだ………。
「…また、一人ぼっち、か。」
そう、消え入りそうな声で呟いた時だ。
水溜まりを踏みつけながら、足音が近づいてきた。