たとえば、捨てられている野良犬がいるとする。
「ジン!起きてっ!」
そのまま通り過ぎてしまえばいい、
「…うーん……。」
なのに目が合ってしまった。
「起きろっての!仕事遅刻するよっ!」
その、たった一瞬。
「んー…ツバサちゃん、チュー……。」
目と目が合った瞬間に、何ていうか……
「アホかっ!!」
運命的なものを感じたとしよう。
「…チュー!」
まるで、
電流が身体を駆け抜けていくように。
「…私も遅刻するでしょっ!早くっ!」
それは、もう引力に引かれていると言ってもいい。
「チュー!」
「…ネズミかっ!?」
「…………。」
「………あぁ!もうっ!」
そして、それは少し恋と似ている気がする。
「…知らないからね。遅刻したって。」
今にして思えば、
二人の出会いも、きっとそう。
「たまには、そんな日もいいんじゃない?」
目と目が合った瞬間に、
私はキミに落ちてしまったんだろう。
「愛してるよ。ご主人サマ。」
「………ばか。」