瞳に映る世界が濁っている。
マンションのエントランスの明かりは二重、三重にぼやけていた。
それが雨のせいなのか、涙のせいなのか、よく分からない。
酷い眩暈を覚える。
ただ、ジンと過ごした日々が、その瞬間、瞬間が写真のスライドショーみたいに流れていた。
その内、身体に力が入らなくなって、
私の視界は大きく揺れた。
痛みと衝撃のあとで、瞼を開ける。
転んだのだろうか。
それとも、倒れたのだろうか。
……もう、どちらでもよかった。
冷たい雨が私の頬を打つ。
世界が滲んでいく。
私の身体を突き刺すように降り続く雨。
その雨音は、どんどん遠くなっていく。