私を嘲笑うように、沢崎さんは半分程ボタンを外してしまうと、
何かを手にして屈み込んだ。
反射的に身体が強張る。
鎖骨と胸の間に細い何かが押し当てられて、それは何かを書いているような動きをみせた。
それから、沢崎さんは何事もなかったみたいに私の上から立ち上がった。
呆然とする私を見下ろす沢崎さんは、小さなボストンバックを手にする。
「嫌がる女の子に無理やり手ぇ出すほど、女に困ってないんだ。」
「…………。」
「俺に会いたくなったら、いつでもかけて。」
そう言い残し、立ち去っていく。
玄関からパタンっと扉の閉まる音が室内に響き、
私はそこに一人取り残された。
ハッとして、鎖骨の下に視線を落とす。
私の肌には、“090”から始まる電話番号が赤い文字で書かれていた。