「な、に?」
ジンの表情は、私からは見えない。
「俺さ、ツバサちゃんのペットですげぇ幸せ。」
「…………。」
「幸せだぁーー!」
「……ッバカじゃないの!もう、今日のジンは何か変!」
「…まだ、寝ぼけてるからね。」
ジンは、私を抱きしめていた腕の力を緩める。
「行ってらっしゃい。」
そう言うと、ジンは私に不意打ちのキスをした。
「ッ!」
驚く私に向けるのは、優しい笑顔。
「このエロペット!」
キス魔なのか!?
ただのペットの愛情表現か!?
ほとんど逃げるようにカバンを持って、玄関へ向かう。
私の背中に、もう一度ジンは言った。
「…行ってらっしゃい。」
私は振り返らなかった。
振り返らずに言った。
「……今日、甘口に半熟卵がのったカレーライス作ってあげるから。
ちゃんとイイ子にしててね。」
扉に手をかけて、部屋を出る。
パタリ、と私の背後で扉は閉まった。