バスルームに向かった男の背中を見送り、私は考える。
さて、どうするか。
とにかく、メシだけ食わせればいいよね?
何者かも分からない男に、ここまで親切にしてやったのだ。
きっと……ちゃんと、私はママの教えを守れてるよね?
そう思いながら、ママの写真に目を向ける。
写真立ての中で、ただのガキンチョだった私を抱きしめて、ママは笑っていた。
― 「人に優しく、自分に正直に。」
20歳で私を産んだママは、未婚のシングルマザーだった。
突然の交通事故で亡くなるその日まで私を愛し、育ててくれた。
世界一、いや宇宙一、大好きなママ。
この部屋も元々はママと二人で暮らしていた。
……もちろん、ママがいた頃は今のようなゴミ屋敷ではなかったのだけど…。