「すぐに忘れちゃうくらい、その人でいっぱいだから、さ。」




私の言葉を聞いて、ナナセちゃんは黙って俯いた。







修羅場?


ううん、
これは仲直りだって、私は思ってるよ。







私はカバンを手にすると、三人に言った。



「じゃ!愛しの愛犬がウチで待ってるからさ。」


「翼!」


桜助が声を上げる。




……ったく。この男は、本当に…。




「桜助!」


「は、はい!」




桜助は反射的に背筋を伸ばし、私は桜助を指差して言った。



「私の後輩、泣かせたら許さないから!」


その瞬間、ナナセちゃんも顔を上げた。




「分かった!?」


「は、はい!!」



私の迫力に負けた桜助は、ハッキリと返事をした。





「じゃっ!」



私はそう言うと、
駆け足で教室を出た。