ピカピカで清潔な、無駄に広いだけのエントランス。
滴り落ちる雨雫。
私は、男の腕を自分の肩に回して、支えながらエレベーターまで歩いた。
まるで高級ホテルのような56階建てのマンション、私はその51階の部屋に一人で住んでいる。
エレベーターに乗り込んで、扉が閉まる。
浮遊感の後で、小さな箱は上昇していった。
このエレベーターは、外の景色が見える造りになっている。
窓の向こう、地上の明かりは次第に遠くなり、吸い込まれそうな濃紺の空へと近づいていく。
雨が冷たい都会の街を濡らしていた。
自分よりも大きな男を支えながら、私は溜め息を零す。
一体、何をやってるんだろう……。
こんなモノを拾ってくるなんて……いくら、何でも、どうかしてたとしか言いようがない。