「観月さん…泣きすぎだって。そんなんだから38歳独身で、ママにも相手にされなかったんだよ。」
そう言ってみると、途端に観月さんは顔を赤らめた。
観月さんは、私のママをずっと慕っていた過去がある。
それは、当時まだガキンチョだった私から見ても一目瞭然だったけど、思いが報われることはなかった。
観月さんは、一度咳払いをしてから口を開く。
「と、とにかく!“先生”にも何とご報告したらいいのか…。」
「…テキトーに、何とでも言えるでしょ。」
冷たく言い放つ私に、観月さんは悲しそうな瞳を向ける。
「翼様…。“先生”は翼様のことを本当にご心配されておられます。」
「あの人はっ!ママの葬式にも来なかったじゃない!」
私の声が、部屋の中に響き渡った。
「……あの人の話はしないで。…用が済んだなら帰って。」
「翼様……。」
「…私は元気だし、これからも元気だから。」
顔に張りつけた笑顔は、観月さんの瞳にどう映っただろう。