「僕の両親と兄がシスコに引越して半年ほど経った頃、敦子さんから両親宛に手紙と写真が送られてきたんだ。もちろん写真は君のだよ。手紙にはただ『娘が生まれました。太郎さんとよく話したディズニー映画の題名から万美(バンビ)とつけました』って書いてあった。それから手紙は一方通行にしたいってこともね」



「それだわ、毎月わたしを撮りまくってたのは」


わたしはつい相槌を打った。



ふぁんたはニコニコして続けた。


「僕は君より二年あとに生まれたの。ぼくが幼稚園に入った頃両親の部屋で君のアルバムを見つけたんだ。僕がママにこの人だあれ?って尋ねるとママはニッコリとして、あなたのお姉さんよ!日本に住んでいるの、って言ったの」



「信じられない。天使のようなママね」


わたしはしらけた言い方をした。



「そうでしょう!」


ふぁんたは嬉しそうに言った。



―嫌味の通じない相手だ―



普通なら「がーん」とくる話なんだろうけど、何故か彼を通して聞いた〔事実〕はオブラートのようなものに包んで楽に飲み込まされた感じだった。