りまーす」と、言い方は優しいが、大人たちを押し倒しながら前に進む「何この子」「バカ野郎」「足を踏まないでよ」「チカン」などあらゆる罵声を浴びさせられてもびくともせずに前に進んでいく。まるで戦車だ。やっとのことで総合受付に着いた。
 「ただいまをもちましてゼロヨンレース受付終了です。ありがとうございました」
 受付が終了してしまった。
 「ハイハイハイ。出ます。出ます。出まーす。ゼロヨンレースに出ます」
 隼人が同じ言葉連呼しながら走って行く。
 「ブッブー。終了です。時間切れ」
 隼人よりも背丈の小さい生意気そうな少年が、総合受付のお姉さんの横から顔出した。
 「疾風黙ってなさい」
 受付のお姉さんは疾風の頭にゴチンと拳骨を落とした。
 「ごめんなさいね。エントリーシートにご記入ください」
 隼人はエントリーシートを3枚もらった。僕はエントリーシートに記入してすぐに受付に出した。
 「今からゼロヨンレースのルールを説明します。小学生低学年部門、小学生高学年部門、中学生部門、一般部門に分かれています。このレースは1周400メートルのトラックを婦人用自転車で1周走って誰が1番速いのかという競技です。スタートもいたって簡単です。スタートラインから1台ずつ走って行くだけです。タイムが1番速い人が優勝です」
 小学生高学年クラスの出場選手は10人だった。出走順は隼人、僕、風太で、7,8,9番だった。
 レースは小学生低学年から始まった。5人出場した。優勝者は小学3年生の高山裕人君。タイムは59秒035。
 「小学生高学年のレースを始めます。
 「6年生、杉山翔太君。スタート順備お願いします」
 中学生とも思える筋肉質の身体。Tシャツの上からでも筋肉が盛り上がっている。
 「凄い筋肉だね、あの杉山って子」
 「おい、見ろよ。あいつママチャリのカゴを持って前傾姿勢になってるぜ」