「記憶がなくなって・・・嫌じゃねぇの?」
「? 別に?だって生きてるんだもん。死んじゃうよりはいいよ。終わっちゃった事は悲しんでも仕方ありませんよ~。それに・・・」
「それに?」
「思い出とかなんてこれからいっぱい作ってけばいいんだもんねー!」
ツツジの言葉には気楽な思いもあったが、何だか違和感を感じた。
事故で入院したなら分かるが、ツツジに顔や体には傷一つなく治っている。
なのにどうして・・・。
何か別の理由で入院してるのかと思ったとき・・・
『思い出と言っても、あと2ヶ月しか無いんだけどなー。』
・・・・え?
今のは明らかにツツジの心の声。
何が・・・
何があと2ヶ月なんだ?
「つっ・・・」
言葉の意味を聞こうとしたとき、携帯が鳴る。
多分、拓馬か健だ。
「拓馬?」
『ああ、健もいるんだけどさ、今ドコだよ。』
「2階の211号室。フロントの真上で、電気ついてるから。」
『そうか、じゃあ今行く。』
電話を切った俺を見て、ツツジが言った。
「・・・もう帰るの?」
さびしそうな顔がまた可愛く、返って行きづらくなる。
ツツジはベットから起き上がり、俺の手を両手で握った。
「・・・もっと・・・話したいよ。」
俺だってもっと話したい。
ツツジともっと一緒に居たかった。
でも、帰らないとこんな夜遅くまで遊んでた事がお袋にばれたら・・・きっと殺される。