・・・また聞こえちまったよ。人の「心の声」。
言い忘れていたが、俺には人とは違う「力」を持っている。
テレパシーって奴?他人の心の声が聞こえる力だ。
無意識に聞こえるから、教室などでは心の声がうるさくてたまらないときがある。
喧嘩の役に立つ時もたまにあるが。(本当、たまにだけど)
声の聞こえる場所を探ろうと、もっと意識を集中させてみた。
『誰か!ヘルプミー!』
高くて綺麗な声だ。
多分女なのだろう。
声の聞こえる方向に向かっていくと、誰かが壁に横たわっている。
後ろ髪は短いが、斜め後ろに長く伸びているせいか、全体的に長くみえる。
背は俺の肩ぐらいで、患者服を着ているから、入院しているとうかがえる。
携帯の光で照らしてみると、はっきりと顔が見えた。
童顔で瞳が特に大きく、かなり色白の肌。鼻が整っていて、基本的に可愛い顔をしている。
「おお、人だ。」
俺が目に入ったのか、相手はホッとした顔で言った。
「よかった。トイレから帰ったものの、動けなくなっちゃって。2階に戻りたいんだけど・・・」
やけに馴れ馴れしい。
「俺、忙しいから。」
そう言ってその場を去ろうとするものの、一反立ち止まって振り返った。
一回コイツを部屋に送って、そこで拓馬たちを待てばいい。
もっと言えば、可愛い子を置き去りにするのは運ぶより困難だ。