でも、もちろんそんなの後にして思えば、だ。
頭に血が昇っている状態で、冷静な判断が出来るはずもない。

「何よ、何を決めたっていうの?」

ヒステリーな私の質問に、稲葉くんは挑戦的な笑みを浮かべて唇を開く。


「もちろん。
 キリンと一緒にバンドを組むってことを、だよ」

意地悪そうな視線とは裏腹な、艶を帯びた優しい声に私は簡単に怒りを忘れてしまった。



「――え?
 稲葉くん、私とバンド組んでくれるの?」

そうなると話は別。
それまでのヒステリーは一瞬にして影を潜め、私は口許を緩ませていた。


だって。
だって、夢にまで見てたんだもん。