ふらふらと起き上がって部屋着に着替えると、リビングへと向かった。

明かりがついていないという事は、西園寺は自室に閉じこもっているということか。

そう考えていたら、ふとベランダに続く扉が開いているのが見えた。

音を立てないように近付くと、そこに西園寺の後ろ姿を見つけた。

黒いスエットを着た彼は、やはりとても背が高かった。
私だってそう小さくはない筈だが、それでも西園寺の事は見上げる必要がある。


手すりに片腕を乗せ、長い足を組み、満月を見上げている彼は、どうやら電話をしているようだった。


しばらくその状態のまま、西園寺の後ろ姿を見つめていた。
やがて電話が終わったのか携帯を閉じ、ゆっくりと振り返った彼は、私の姿を見つけた瞬間動きを止める。


「あ…」

「起きたのか。」


先に口を開いた彼は、スリッパを脱ぐと部屋に入って後ろ手で扉を閉める。
途端に静まる空間に何だかいたたまれなくなった。