「お前、名前なんての?」
「やめろよ!玲は関係ないだろ!」
不意に男が私の腕を掴んできて、それを見た隼人が叫んだ。
「人に名前を聞くならまず自分から言え。腕を掴むな。」
慌てる隼人を横目に、至って冷静に口を開く。
すると男は楽しそうに笑った。
「お前な、俺らにそんな口聞くと」
「そんな戯れ事はいい。とにかく手を離せ。」
そう言い捨てた瞬間、男の目つきが変わったのが分かった。
「こいつを連れてけ。」
男は自分の後ろにいる手下のような男達にそう言い放った。
本当に、なんて面倒くさいんだろう。
「わりぃな。」
ちっともそう思ってないくせに。手下に掴まれた両腕が痛い。
視界の端に映る隼人の顔が、青ざめている。
きっとこいつらに会う度に、毎回嫌がらせを受けていたんだろう。
理事長が言うのはこういう事か。
なんて可哀相に。